私は兵庫県警の警察学校の教官をされていた寒川清和先生/英新門武有会に幼稚園児の頃から糸東流空手を教えて頂きました。

寒川先生は実業団空手で何度も優勝してきた実力者で射撃も国体で優勝するような方でご自宅に山のようにトロフィーや賞状が飾られていました。

また、警察学校の逮捕術等の指導で脱臼したりするのを治すために私の母校でもある明治東洋医学院専門学校で柔道整復師の免許も取得されていたので、弟が脱臼した際等には整復して頂いた事もあります。

ここが私の武医同術の原点になります。


この項では、寒川先生から教わった空手の技術を中心に身に付けてきた武術・格闘技の技術を分析していってみたいと思います。


真っ直ぐに立つ
寒川先生から教わった基本中の基本は真っ直ぐに立つ事です。
真っ直ぐに立つと言っても定義は中々に難しいものがあります。
運動学の基本では足裏の脛の骨・脛骨の真下、若しくはやや前方に重心がくるように、その上に膝の中央、大転子という太股の骨・大腿骨の出っ張り、肩峰という肩甲骨の外側の先端、耳の穴、頭部の天辺の百会のツボが揃うように立ちます。
図で確認出来るように骨組みで真っ直ぐに支えるので重力に対して強い姿勢になります。 
私の治療ではこの姿勢をとれるように、短縮している筋筋膜を弛緩させ、抗重力筋を促通過させ、関節のミスアライメントを整復します。
寒川先生には「天井が落ちてきても支えられるように立て」と良く言われました。



お薦め参考文献

美しく立つことができ,上手に体を動かすことができれば,運 
動器を健康に保つことができるという認識のもとで,体操やストレッチ,トレー 
ニング方法を具体的に紹介.スポーツ医学の見地からキーワードとなる3つのA─ 
Anatomy(アナトミー:構造と機能),Alignment(アライメント:姿勢肢位 
の違い),Awareness(アウェアネス:身体を認識する)─に基づき,中高 
年者の運動器の痛みやアスリートの障害予防について実践的に解説.スポーツド 
クターをはじめ,整形外科・リハビリ分野の医療関係者の必読書.

著 
渡會公治(東京大学助教授)


空手に構えなし

武術、護身術はスポーツ化した試合と違ってありとあらゆる状況で身を守る必要があるので構えに本来特定の形はありません。日本の古武術は座ったり、寝たり、武器を持っていない圧倒的に不利な状況でも何とかしようとする稽古が多いですね。
徒手空拳であることに誇りを持つ方も多いですが、武術・護身術の発想としては身の回りにある物で使えるものは何でも使って武器化しますし、徒手でも身体運用の原則は武器を持った場合と同じです。
そういう考えがあった上で基本となる構えが自然体です。
上記のような運動学での真っ直ぐに立った姿勢では膝が伸びきった状態でロックがかかり(スクリューホームムーブメント)動き出し辛いし、前から蹴られると骨折や靭帯損傷等をしやすい状態になりますから軽く膝を曲げて余裕を持たせます。
また、両腕は下段払いをして臍下丹田の高さに拳を持ってきて丹田を意識します。
極真空手等では十字礼として行いますね。
臍下丹田はほぼ身体の物理的な重心となりますね。
兵法の身なりのこと
身のなり、
顔は俯(うつ)むかず、仰(あお)がず、傾(かたむ)かず、ひずまず、目を見出さず、
額に皺(しわ)をよせず、眉間に皺をよせて
目の玉の動かざるやうにして、瞬(まばた)きをせず、目を少しすくめるやうにして、うらやかに見る顔、鼻すじ直にして、少し頤(おとがい)を出す心なり、首は後ろの筋を直に、頸(うなじ)に力を入れて、両の肩をさげ、脊筋(せすじ)をろく(真っ直ぐ)に、尻をいださず、膝より足の先まで力を入れて、腰の屈(かが)まざる様に腹をはり、
楔(くさび)をしむると云て、脇差の鞘に腹を持たせ、帯のくつろがざるやうに為す可し
と云ふ教へあり、総て兵法の身において、
常の身を兵法の身とし兵法の身を常の身とすること肝要なり、よくゝゝ吟味すべし、

倒木法(倒地法)

写真は左が糸東流開祖の摩文仁賢和先生で右が賢栄先生です。

賢栄先生が行っているのが、倒木法になります。

つまり、重力に従って木が倒れるように前のめりになっている状態です。

谷長次郎先生
シンキング空手
ゼロ テンション ゼロ
ダブルツイスト

沖縄伝 武備誌

スワイショウ

歩法
禹歩

ストレッチ ショートニング サイクル (SSC)

東恩納盛男先生
三戦

遠山の目附


先に開展を求め、後に緊湊に到る
先に大きな動作で動きを覚えて、身に付いたら小さい精密な動きを身に付ける

デューク更家さんのウォーキングなんかもそうですが、大きな動きで身体の使い方を学んでから緻密な動きを身に付けることが要訣です。
一見使えないように思う基本稽古や型の中に技の原理が含まれていますが、わかってしまえば自在に変化して使うことが出来ます。

三角形の頂点に落とす

合気系の技術
両足の中点からの垂線方向に力を加えて崩す

少林寺拳法の森道基氏の技法

バックダウンとフロントダウン
バックダウン=上腕骨外旋方向、近い方の足へ重心を乗せる。背部運動連鎖、督脈の利用。
フロントダウン=上腕骨内旋方向、遠い方の足へ重心を乗せる。胸腹部運動連鎖、任脈の利用

三角技法
接点と対角の肩峰を結んだ線の中点からの垂線方向に力を加えて崩す

武術、格闘技で大切な五つの首

レスリングをされていた知人から教えてもらった言葉で五つの首を征すると言うのがあります。
首、手首、足首を掴まえてコントロール出来れば相手を征する事が出来るというものです。
バイオメカニクス的には脊柱、上肢、下肢の筋膜連鎖の巻き上げ機構の働きをする箇所になります。
手技療法では上部頚椎はカイロプラカティックで、手首、足首をコントロールする末梢の経穴は鍼灸で重要視されています。

居着きの科学


1対1のスポーツで攻防を制する仕組みを明らかに―名大・藤井慶輔氏ら | サイエンス - 財経新聞

http://www.zaikei.co.jp/article/20151108/277582.html

二者間の攻防を制する仕組み - 名古屋大学

http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20151105_htc.pdf



 名古屋大学の藤井慶輔博士らのグループは、対人スポーツにみられる二者間の攻防を制するには、「自分は居着かず(※)、相手が居着いた瞬間を狙う」ことが重要であることを、

モデルシミュレーションを用いて明らかにした。


※居着き:認知と運動が協調している時には動きたい時にすぐに動けるが、この協調が破られると、動きたい時に動きが遅れてしまう。この動きが遅れる状態のことを指す武道の用語。


 球技や格闘技などの対人スポーツにおいては、相手の動きを予測しつつ自分の動きを正確に実行し続ける必要がある。しかし、「どのように動けば攻防を制することができるか」を研究する

枠組みは、これまで明らかにされていなかった。


 今回の研究では、まず二者の認知・運動要素が二者間で相互作用するモデルを構築し、個人の認知・運動能力の差を考慮せずに、攻防の本質を考えられるようにした。


 そして、バスケットボールの1対1練習での二者の動きを分析したところ、防御者が「移動しやすい」時は、思った通りに動けるため防御成功の確率が高く、逆に移動しにくい時は防御失敗の

確率が高くなることが分かった。このことは、自分が移動しやすいこと、つまり自分の認知に対して運動の遅 れがなくなることが攻防に有利になることを示している。


 さらに、攻撃者が防御者の移動しやすさを観察した条件は、観察しなかった条件よりも、攻撃成功の確率が高くなることが明らかになった。このことは、相手の状態を見て「相手が移動しにくい

時を狙うこと」が勝つために重要であることを示している。


 今回の研究内容は「Scientific Reports」に掲載された。論文タイトルは、「Mutual and asynchrounous anticipation and locally coordinativedynamics」。

リフラクトリーピリオド

Eyal Lederman氏のポッドキャストより興味深い意見;

「2つのグループの内、1つのグループの人たちには、例えばダンベル運動をさせる時に、注意を体の外側へ向けるように指示をした(例えば、ダンベルをこの高さまで、と)。もう一つのグループの人たちには、注意を体の内側へ向けるように指示をした(例えば、上腕二等筋に意識をして、肘をこの角度まで、と)。非常に驚くべきことは、注意を内側へ向けたグループの人たちの筋活動(EMG)は非常に高く、つまりそれは非効率的な運動をしていた、とわかった。

これをリハビリの場面に当てはめると、たしかにその動きに対して初心者であれば、最初は注意を体の内側に向けるのは必要かもしれない。しかし治療院にくる患者のほとんどは動きに対して”初心者”ではない。なぜなら歩いたり、飛び跳ねたりできるのだから。(テニスをして怪我したも同様)。そうした動きの中でおった怪我の治療(リハビリ)で、体の内側へ注意を向ける運動は、ムダでしか無い。

ちなみにこの事は皆から強く支持されている説だ。

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合気系武術で相手の肩に触れるように掴まれた腕をほどく、髪をかき揚げるように掴まれた腕を振りほどくなどの技術に使われますね。